憲法にある公共の福祉とは?看護師として思うこと

憲法に掲げられる「公共の福祉」という言葉は、多くの人にとって抽象的で、具体的に何を指すのか理解しにくい概念かもしれません。特に私たち看護師という福祉や医療の現場に立つ者にとっては、「公共の福祉」がどのように制度や日常業務に影響し、私たちの仕事の意義や困難とどう繋がっているのか、深く考えさせられる問題です。
この記事では、憲法にある「公共の福祉」という言葉の意味をあらためて考え、看護師としての立場からこの考え方に対して感じることや現場のリアルな状況を交えてお話ししていきます。さらに、介護保険法や医療法、老人福祉法といった制度の中で「公共の福祉」がどう位置づけられているかを整理しつつ、現実には利用者の人権尊重や安全確保の理念と利益追求の狭間で揺れる福祉サービスの現状にも目を向けてみたいと思います。
憲法における公共の福祉とは何か
憲法第13条では「公共の福祉」は、個人の権利や自由が他の個人の権利や社会全体の利益と調整されるべき価値を示す原理として位置付けられています。つまり、個人の自由や権利は絶対的なものではなく、社会の秩序や他者の権利を侵害しない範囲で保障されるべきだという考えです。
看護師の視点で見ると、この「公共の福祉」は利用者の人権や尊厳を守りつつ、医療や福祉サービスの持続可能性を確保するためのバランスだと言えるでしょう。たとえば、患者さん個人の自由や希望に耳を傾けながらも、医療資源や人手の限られた現場では、全体の利益を考えた調整も避けられません。
参考:公共の福祉とは?「公共の福祉に反しない限り…」を簡単に説明(介護健康福祉のお役立ち通信)
福祉制度と公共の福祉の関係性
介護保険法、医療法、老人福祉法などの制度は、いずれも利用者の人権や安全を守るだけでなく、そのサービスが長く続けられるように設計されています。これも憲法が示す公共の福祉の一環として考えられています。つまり、ただ単に利用者のニーズに応えるだけでなく、制度の持続性や公平性も考慮することが求められているのです。
しかし、現場経験からすると、これらの理念と実態の間には大きなギャップがあります。利用者本位が強調されるあまり、制度の持続可能性について十分な議論や配慮が不足しているケースも散見されます。加えて、医療法人や社会福祉法人、さらには株式会社などの施設運営者が利益追求を優先し、福祉サービスをビジネスの対象として扱う現実も否定できません。
看護師として現場で感じる「公共の福祉」の難しさ
病院やクリニック、訪問看護、介護施設など、様々な現場で働く看護師としては、利用者の権利尊重は何より大切だと強く感じます。しかし、一方でスタッフの人手不足や経営的な制約も日常的に実感しています。その中で「公共の福祉」をどう実現すべきか悩むことが多いのです。
例えば、訪問看護の現場では、利用者一人ひとりに寄り添い、個別のニーズに応える時間も必要ですが、限られた時間と人員の中で多くの利用者を支援しなければなりません。利用者の利益を第一に考えたいのに、現実は効率やコスト制約に縛られることも多いのです。ここに、公共の福祉と個別の人権の調整というテーマが浮かび上がります。
また、介護施設では法人の経営方針として利益確保が重視されるケースもあり、看護師としてはサービスの質や利用者の安全に不安を感じる局面もあります。こうした状況に直面すると、「公共の福祉」とは一体何なのか、分からなくなってしまうことも少なくありません。
利用者本位と利益追求の狭間で揺れる福祉サービス
福祉サービスは本来、利用者の生活を支え、尊厳を守るための制度であるべきです。しかし、現実には制度利用者の人権を尊重する理念が先行するあまり、制度の持続性や社会全体の利益を考える視点が見落とされがちです。
さらに、医療法人や社会福祉法人、株式会社などの経営者が福祉サービスをビジネスとして捉え、利益を追求する動きは看護師として深刻に感じます。サービスの質や利用者の安全が損なわれることもあり、これが福祉の本質とは何かを問う課題になっています。利益を出すことが悪いわけではありませんが、それが利用者の人権や安全を犠牲にしてしまうなら、そこに公共の福祉は存在しないのではないかと感じるのです。
どこまでが公共の福祉なのか、私たちはどう考えるべきか
「公共の福祉」という概念は、時に抽象的で捉えどころがないため、現場で働く私たち看護師には難しい問題に映ります。利用者の人権尊重と制度の持続可能性、そして法人経営の利益追求の間で、どこまでが「公共の福祉」であるのか判別することは容易ではありません。
それでも私たち看護師は、利用者の声に耳を傾け、尊厳を守りつつ、現実的な制約や制度の持続性にも目を向ける必要があります。自分たちの現場での日々の業務が、制度の根幹である公共の福祉を支えていることを意識しながら、利用者本位と社会全体の調整のバランスを考える姿勢が求められているのです。
また、制度の運営や法人の在り方についても、看護師自身が声を上げ、問題や矛盾を共有していくことが重要だと思います。それが福祉サービスの質を高め、持続可能な仕組みを作る一助になるのではないでしょうか。
公共の福祉をどう捉え、看護師として何をすべきか
憲法にある「公共の福祉」は、個人の自由や権利と社会全体の利益を調和させる理念であり、福祉制度の根底に位置づけられています。看護師としては、利用者の人権と尊厳を守ることを第一に考える一方で、そのサービスが持続可能で公平なものであるために、現実的な制約や制度の運営にも向き合わなければなりません。
しかし、現実の福祉サービスの中には、利用者本位の理念が先行しすぎたり、法人経営者による利益優先の影響が見られるため、公共の福祉の本質が見えにくい状況にあります。だからこそ、看護師が日々の業務を通じて現場の課題を感じ取り、声を上げ、制度の改善や持続に貢献していくことが求められているのです。
公共の福祉とは何か、どこまでがそれに含まれるのか、はっきりしないことも多いですが、この問いを忘れずに看護師としての使命を果たすことが、私たちにとって最も大切なことではないでしょうか。
