精神科看護師ってレベル低い?レベルって何ですか?

「精神科出身の看護師ってレベル低くない?」
そんな言葉を聞いたことがある方もいるかもしれません。でもちょっと待ってください。そもそも「看護師のレベル」って何を基準にしているのでしょうか?採血が早い?ルート確保がうまい?処置が手際いい?たしかにそういった技術的なスキルで判断されがちですが、それだけで看護の価値を測るのは非常に狭い視野だと言わざるを得ません。この記事では、「精神科看護師=レベルが低い」という偏見がいかに浅はかかを考えていきます。
技術スキル=看護師のレベル?
看護師の「レベル」という言葉は、医療現場ではしばしば処置スキルや緊急時対応能力を指すものとして使われがちです。たとえば、
といった“目に見える技術”が評価されやすいのは事実です。内科や外科、急性期病棟ではそういったスキルが日常的に求められ、そのスキルを磨く環境も整っています。
一方で、精神科ではそもそも採血や点滴、手術の介助といった医療行為自体が少ないため、そうしたスキルを磨く機会が限られます。そのため「精神科出身だと処置ができない」「技術がない」と誤解されやすいのです。
精神科看護師が対応している別のレベル
しかし、精神科には精神科ならではの“別の高レベルなスキル”が存在します。たとえば以下のような患者さんと向き合うには、非常に高度な観察力と対人スキル、そして冷静な判断力が必要です。
こういった患者に対して、薬や機械ではなく“人間対人間”としての関わりで支えていくのが精神科看護師の仕事です。相手の表情の微妙な変化、発言の裏にある感情、異常行動の兆しをいち早く察知して、安全を確保しつつ信頼関係を築いていく——このような関わりは、マニュアルどおりの処置とはまったく異なるスキルセットが必要です。
看護師同士で“レベルマウント”はやめませんか?
処置ができる=偉い、精神科出身=使えない。
そんな価値観で他人を見下すことは、看護という職業の本質から遠ざかる行為です。看護は「チームで患者を支える仕事」です。一人の看護師がすべての領域を完璧にこなす必要はありませんし、現場によって求められるスキルが違うのは当然です。
たとえば、精神科出身の看護師は「言葉で人を落ち着かせる」「感情をコントロールする」「観察力が鋭い」といった強みを持っています。急性期病棟では技術に優れた看護師が重宝されるかもしれませんが、ターミナルケアでは精神的ケアのうまい看護師が活躍する場面も多いのです。
得意なこと、経験したことが違うだけ。それを「低い」「使えない」とラベルづけするのは、看護師としても人としても悲しいことではないでしょうか。
もし「精神科出身だから…」とバカにされるなら
もし今の職場で、精神科で働いていた経験が軽視されたり、「レベルが低い」と見下されるような空気を感じるのであれば、それはあなたが悪いのではありません。職場に多様な経験を尊重する文化がないだけです。そんな環境で無理に耐える必要はありません。
今は看護の専門性が細分化し、精神科経験者を高く評価する職場も増えています。高齢者施設、訪問看護、慢性期病棟、緩和ケアなどでは「精神的なケアができる看護師」が非常に重宝されています。自分の経験が活かせる職場は、必ずどこかにあります。
看護のレベルは一つじゃない
精神科看護師に限らず、看護師のレベルは一律では測れません。処置スキルが高いのも立派な力、相手に寄り添う力もまた別のレベルの高さです。
誰が上で誰が下、という比較ではなく、それぞれの強みを生かし合うのが本来のチーム医療のあり方です。
もし自分の経験が軽視されていると感じたら、我慢せず、環境を変えることも立派な選択肢です。看護の世界は広く、多様性を理解してくれる職場も必ずあります。