訪問看護に転職して自由になれたと感じるまでの話

病棟を辞めて訪問看護に転職すると言ったとき、同期に「一人で行くの怖くないの」と言われた。確かに最初は怖かった。病棟なら何かあれば先生を呼べるし、先輩もいる。でも訪問看護では、利用者さんのお宅に一人で行って、判断を下さなければならない場面もある。今日は転職して感じた「病棟との違い」を、良い部分も大変な部分もひっくるめて正直に書く。訪問看護が「楽」なのか「大変」なのか、そのどちらでもなく「違う種類の仕事」だということを、体験談とデータをもとに整理したい。

訪問看護の求人が増え続けている現実

訪問看護ステーションの数は、2000年代から一貫して増加し続けている。高齢化と在宅医療の推進政策を背景に、在宅ケアのニーズは今後も拡大することが確実視されている。厚生労働省のデータでは、看護師全体の有効求人倍率は2.2倍超だが、訪問看護分野では地域によってさらに高い倍率になっていることも多い。「訪問看護に転職しようとしたが仕事がなかった」というケースは現状ほぼない。むしろ「いつでも来てほしい」という職場が多く、転職のタイミングで困ることは少ない。

給与水準は病棟に近い

「訪問看護は給料が下がる」というイメージがあるが、実態はケースバイケースだ。夜勤なしの場合は夜勤手当がなくなるため、その分の収入は減る。一方で、訪問看護ステーションの中には基本給が高めに設定されているところや、訪問件数に応じたインセンティブがあるところもある。令和4年の賃金構造基本統計調査によると看護師の平均年収は508万円だが、訪問看護では経験者であれば同程度かそれに近い年収を実現できるステーションは少なくない。転職エージェントを通じて複数の求人を比較することで、給与条件の実態を把握できる。

オンコール対応について

訪問看護の「オンコール」について不安に思う人は多い。夜間・休日に利用者さんやご家族から電話が来て、状態確認や対応指示を行うオンコール当番が定期的に回ってくる。ただし、全てのオンコールが訪問を必要とするわけではなく、電話対応で解決することも多い。ステーションによってオンコールの頻度や手当の額は大きく異なる。転職前に「月平均何回オンコール当番があるか」「実際に夜間訪問になる頻度はどのくらいか」を確認することが、入職後のミスマッチを防ぐ。

病棟と訪問看護の「違い」を正直に比較する

病棟から訪問看護に転職した人が「違う」と感じるポイントを整理しておく。どちらが優れているという話ではなく、働き方として何が変わるかを知っておくことが、転職後のミスマッチを防ぐ。

一人での判断という重さと充実感

訪問看護では、利用者さんのお宅に一人で行くことが基本だ。異変に気づいたとき、医師に連絡するかどうか、119番を呼ぶかどうか、その判断を自分が下さなければならない場面がある。これを「怖い」と感じる人もいるし、「自分の判断で動ける充実感」と感じる人もいる。病棟で先輩に常に確認しながら動いてきた人には、最初は不安が大きいかもしれない。でも経験を積むにつれて、「自分で完結できる」という達成感が生まれてくることが多い。

利用者・家族との関係の深さ

病棟では、患者さんとの関係は入院期間中だけのことが多い。訪問看護では、同じ利用者さんのお宅に何ヶ月・何年と関わり続けることになる。その関係の深さは、病棟とは全く違う。「ありがとう、あなたに来てもらえて良かった」という言葉をいただいたとき、この仕事を選んで良かったと感じる人が多い。反面、利用者さんが亡くなることへの悲嘆も、病棟より個人的なものになることがある。この特性が自分に合うかどうかが、訪問看護向きかどうかの一つの判断基準になる。

転職して6ヶ月後、初めて担当した利用者さんが亡くなった日、管理者が「今日は早く帰ってゆっくりしてね」と言ってくれた。前の病棟では看取りがあった翌日も普通に出勤して、何もなかったように夜勤に入っていた。「気にかけてもらえる」ということがこんなにも違うのかと、車の中でしばらく泣いた。

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訪問看護で「大変」と感じること

訪問看護を「楽な職場」として転職すると、想定外の大変さに直面することがある。訪問看護の大変さは病棟とは種類が違うが、それなりの負荷があることは知っておく必要がある。

一人で動く精神的負荷

訪問先で急変や異変があったとき、一人で対応しながら連絡調整をすることの精神的負荷は、慣れるまで大きい。「これは正常範囲内か」「医師に連絡すべきか」という判断を、その場で一人で下さなければならない。病棟のように「先輩に確認する」という選択肢がない。ベテランの看護師でも「病棟と違うので最初は緊張した」という声は多い。ただし訪問看護ステーションでは、電話で相談できる体制が整っているところも多く、完全に一人という状況ではないことも事実だ。

移動と書類業務

車やバイクでの移動が多い訪問看護では、天候に左右される日もある。訪問の合間の移動時間や、記録書類の作成に時間がかかるという声も多い。特に最初は記録の書き方に慣れていないため、残業が多くなることもある。ただし電子記録システムが整備されているステーションでは、この負担が大幅に軽減されている場合もある。転職前にシステムの充実度を確認することが有効だ。

訪問看護で「自由を感じた」体験談

訪問看護に転職して「自由を感じた」という言葉の意味は、人によって違う。でも共通しているのは「自分で考えて動ける感覚」だ。病棟の中での動きは、組織の動きの中に組み込まれることが多い。訪問看護では、利用者さんとの関係の中で、自分のペースと判断で動ける部分が多い。この感覚の変化が「自由になった」と表現されることが多い。

時間の使い方が変わった

病棟では勤務時間中は常に何かをしなければならない感覚があった。訪問看護では、訪問と訪問の合間に移動時間があり、その時間に頭を整理したり記録をまとめたりすることができる。「一息ついて考える時間がある」という感覚は、病棟生活では得られなかったものだという声を多く聞く。この「ペース感の違い」が、精神的な余裕につながっていることが多い。

利用者さんとの個別の関係

病棟では、複数の患者さんを同時に担当し、全員に均等なケアを提供することが求められる。訪問看護では、一対一の関係が基本だ。「この方のために今何が必要か」だけを考えて動ける場面が多く、「ケアの本質に向き合えている」という感覚が生まれやすい。患者さんの人生の一部に、より深く関わる感覚は、病棟とは全く異なる。

担当の利用者さんから「あなたが来る日が楽しみで」と言ってもらえたとき、この仕事を選んで良かったと本当に思えた。病棟では30人のうちの一人だったけど、訪問看護では私が担当するあの方の看護師だ、という感覚がある。怖いことももちろんあるけど、この関係性があるから続けられている。

転職を考えているなら一度見てみる価値はある

訪問看護が合うかどうかは、実際に経験してみるか、転職した人の話を直接聞くかしないとわからない部分が多い。でも「一度情報を集めてみる」という行動は、今すぐできる。転職エージェントに「訪問看護に興味があるが、不安もある」と正直に話すことで、向いているかどうかの判断材料を整理する手助けをしてもらえることがある。「向いている・向いていない」を調べることそのものは、何のリスクもない。

訪問看護が今の職場の答えではないかもしれない。でも、今の職場が唯一の選択肢でもない。「病棟とは違う看護」がどんなものかを知っておくことが、今後の選択の幅を広げる。今すぐ決断しなくていい。ただ情報だけは先に持っておこう。

訪問看護転職前に確認すべきポイント

訪問看護への転職を考えているなら、事前に確認すべきポイントがある。求人票には書かれていない実態を把握しておくことで、入職後の「こんなはずじゃなかった」を減らすことができる。特に病棟経験者が訪問看護に転職するとき、病棟との違いに戸惑う部分がいくつかある。それを知った上で転職を決めた人と、知らずに入職した人では、最初の数ヶ月の経験が大きく変わる。

ステーションの規模と教育体制

訪問看護ステーションは規模が小さい職場が多い。5〜10名程度のスタッフで運営されているところが一般的で、大規模病院のような充実した教育体制が整っていないことも多い。訪問看護未経験者が入職する場合、「最初の何ヶ月は同行訪問で学べるかどうか」「わからないことを相談できる先輩がいるかどうか」「管理者が教育に熱心かどうか」を確認しておくことが重要だ。「いきなり一人で行って」という職場は、不安が大きくなりやすい。日本看護協会の2024年の調査では既卒看護師の離職率は16.1%という数字があるが、訪問看護でも入職後のミスマッチによる早期離職は少なくない。教育体制の確認が定着の鍵になる。

医療処置の範囲と対応力

訪問看護ステーションによって、取り扱う利用者の医療的な重さが異なる。比較的安定した慢性疾患の利用者が多い小規模ステーションから、人工呼吸器・点滴管理・気管切開など高度な医療処置が必要な利用者も担当する大規模ステーションまで、幅が広い。自分の経験・スキルと職場が求めるレベルが合っているかどうかを事前に確認することが大切だ。「病棟で難しいことをやってきたから大丈夫」ではなく、「在宅での処置は病棟と全く違う環境と条件の中で行われる」という認識が必要だ。

訪問看護に入職して最初の同行訪問のとき、先輩が玄関を入った瞬間に「今日はいい顔してますね」と利用者さんに声をかけた。病院では「バイタル正常範囲内」という言い方をしてきた自分に、この表現はできなかった。でも半年後には自分もそう言えるようになっていた。病棟でのケアが間違っていたんじゃなくて、環境が変わると言葉も変わるということだった。

訪問看護が向いている人・向かない人

訪問看護は全員に合う職場ではないが、特定の人には非常に合う職場だ。向いている人の特徴として、一人での行動が苦でない、利用者・家族との長期的な関係を大切にしたい、自分のペースで判断しながら動きたい、多職種連携に積極的に関わりたい、といったものがある。逆に「チームで動くことでお互いをカバーする感覚が好き」「急変に対応する技術を磨き続けたい」という人は、病棟の方が合っている可能性もある。厚生労働省のデータでは看護師の有効求人倍率は2.2倍超であり、訪問看護でも病棟でも選択肢は豊富にある。どちらが自分に合うかを情報収集しながら考えることができる。転職エージェントに「訪問看護に興味があるが、向いているかどうかわからない」と相談することは、判断材料を増やすための合理的な行動だ。

訪問看護の給与と待遇の現実的な見方

訪問看護の給与について「病棟より低くなる」という先入観を持っている人は多いが、実際には職場によって大きく異なる。夜勤手当がなくなる場合は年収が下がることはあるが、訪問件数に応じたインセンティブがある職場や、基本給が高めに設定されている職場では、病棟時代と同等かそれ以上の年収になることもある。令和4年の賃金構造基本統計調査によると看護師の平均年収は508万円だが、訪問看護で経験者として働く場合に、この水準を維持できる職場は少なくない。転職エージェントに「訪問看護で年収はどのくらい維持できるか」という具体的な相談をすることで、職場ごとの実態情報を得やすくなる。待遇面を含めた比較をしてから判断することで、「給与が下がると思って諦めていた」というミスを防ぐことができる。

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