育休明けに看護師を辞めたいと思ったら読んでほしい話

産んで、授乳して、眠れない夜を何百回も乗り越えて、やっと保育園が決まって職場に戻ったら——なんか、違う。「戻ってよかった」じゃなくて「なんでここにいるんだっけ」って思ってしまう。育休明けに辞めたいと感じること、実は珍しくない。今日はそこを正直に書く。
第二子の育休から復帰して、もうすぐ3ヶ月になる。職場はそんなに悪いわけじゃない。師長もそれほど嫌いじゃないし、同僚もそれなりに声をかけてくれる。でも、毎朝保育園に子どもを預けるたびに、ちょっと胸が痛む。泣く子を先生に渡してダッシュで病棟に向かう朝の時間が、なんか、好きになれない。「辞めたい」というより「このまま続けていいのかな」という感覚。それがずっとある。
育休明けで辞めたいと思う看護師、実はかなりいる
まず、自分だけが弱いわけじゃないことを確認しておきたい。日本看護協会の2024年病院看護実態調査によると、2023年度の既卒看護師(経験者)の離職率は16.1%。新卒看護師の8.8%と比べると約2倍の水準だ。経験を積んだはずの看護師ほど、ある時点で離職を選んでいる。
この「既卒離職」の中に、育休明けで辞めた人がどれだけいるか、正確なデータは出てこない。でも「産休・育児による離職」は看護師の退職理由として上位にずっと入り続けている。仕事を続けようと育休を取って戻ってきたはずの人が、また辞めていく。その繰り返しが現場では当たり前になっている。
育休から戻ったとき、正直「やっぱりここは自分の場所じゃないかも」って思った。1年以上離れてみて初めてわかる職場の空気ってある。戻る前は「早く復帰したい」って思ってたのに、戻ったら「あれ、こんな感じだったっけ」ってなる感覚、わかる人いないかな。
「辞めたい」の中身をちゃんと分解してみる
育休明けに辞めたい気持ちって、ひと言で言えない。いくつかの感情が混ざっている。
子どもと離れる罪悪感
保育園に預けたくて預けているわけじゃない。働かないといけないから預けている、という感覚が抜けない。「かわいそう」は禁句らしいけど、正直そう思う瞬間がある。それでも仕事に行かなきゃいけない、という構造そのものがしんどい。
夜勤明けでヘロヘロで帰ってきたら子どもが「ママどこいったの」って聞いてきて、その顔が忘れられない。仕事頑張っても、ここが報われない感じがして。
夜勤どうするの問題の重さ
育児・介護休業法では、3歳未満の子どもを育てる労働者は深夜業(夜勤)の免除を申請できる。でも、これ、「自動的に免除」じゃない。申し出なければならないし、申し出てもすんなり通るとは限らない。
法律上は権利があるはずなのに、現場では「言い出しにくい」「周りに迷惑」という空気が先行する。それ自体がすでに消耗の原因になっている。
夜勤免除の申請を師長に伝えたとき、「うちは人が少ないから難しいんだけどね」って言葉を添えられた。「難しい」って何が難しいの。法律で認められてるのに。言い方はやさしかったけど、あれはプレッシャーだったと思う。結局その後のスケジュールに私の名前が入ってた。なんにも変わってなかった。
戻ってきた場所が変わっていた
1年以上いなかった間に、メンバーが変わって、システムが変わって、当たり前だったことが当たり前じゃなくなっている。育休前に仲よかった先輩が転職していたり、後輩がリーダー業務をやっていたり。自分の居場所が、なんとなくあいまいになっている感じ。復帰直後に「あれ、私どこにいればいいんだっけ」という感覚になった人は、おそらく少なくない。
子どもの体調不良のたびに「また申し訳ない」が積み重なる
保育園に行き始めると、子どもは最初の1〜2年、驚くほど熱を出す。呼び出しの電話が来るたびに「また迷惑かける」という気持ちが積み上がっていく。職場が理解的でも、自分の中で「チームに負担をかけている」という感覚が消えない。
子どもが発熱するたびに師長に電話するのが、本当につらかった。迷惑かけてることはわかってる。でも病気の子どもを置いてはいけないし、どうすることもできない。板挟みで毎回ぐるぐるする。
「もったいない」「甘え」と思われそうで言えないこと
育休明けに辞めたいと言うと、どこかで「せっかく育休取ったのに」という目線を感じる。職場の人、家族、場合によっては自分自身から。「育休使わせてもらって辞めるの?」という空気は、確かに存在する。
でも考えてみてほしい。育休は「職場への恩返しのために取るもの」じゃない。子どもを産んで育てる期間として、法律で認められた権利だ。育休を使ったから会社に縛られなければいけない、ということにはならない。
日本看護協会の2024年調査では、短時間勤務正職員の制度を導入している病院は31.9%にとどまる。つまり約7割の病院では、正規雇用のまま柔軟に働ける制度が整っていないのが現状だ。「子育てしながら続けられる環境かどうか」は、病院によって大きく違う。環境が整っていない職場で無理に続けることが「辞めない」ことじゃない。環境が整っていないことに気づいて動くことも、立派な判断だと思う。
育休明けに転職するのはアリかナシか
転職に踏み切れない理由として、よく聞くのが「育休取ったばかりで転職したら印象が悪い」というもの。でも、少し解像度を上げて考えてみる。
転職エージェントに登録したとき、「育休明けすぐで転職は難しいですか」って聞いたら、「全然そんなことないですよ、子育て中のナースさん多いです」って言われた。あのとき肩の力が抜けた。「辞めたら負け」みたいな空気って、案外自分の中だけにあったりする。
今すぐ決断しなくていい、でも情報だけ先に取っておく
今、辞めるかどうかはっきりしていなくていい。ただ、「もし転職するとしたら」の情報は、早めに持っておくほうがいい。
今すぐ転職しなくていい。ただ、「転職という選択肢がある」と知っておくだけで、今の職場での消耗の仕方が変わってくる。「他に行けない」と思い込んでいるときと、「いつでも動ける」と思っているときとでは、心の余裕が全然違う。
育休を取って職場に戻ることが「正解」で、辞めることが「失敗」じゃない。どちらも選択肢だし、どちらが正解かは自分の状況によって違う。辞めたいと感じたその気持ちは、弱さじゃない。今の環境が自分に合っていないことを、体が正直に教えてくれているサインかもしれない。
