看護師を辞めたいけど言い出せない、その罪悪感の正体

「辞めたい」という気持ちは、もう何ヶ月も前からある。でも言えない。師長の顔が浮かぶ。ただでさえ人が足りていない病棟の顔ぶれが浮かぶ。受け持ちの患者さんの顔まで浮かんでくる。そうやって今日も「もう少しだけ」と自分に言い聞かせている。その「もう少し」が、もう何回続いているだろう。
この記事は、そういう状態にいる看護師に向けて書く。「辞めたいけど言い出せない」という感情の正体を、できるだけ丁寧に分解してみたい。
「言い出せない」の正体は罪悪感ではなく構造だ
辞めたいと言い出せない理由を、多くの人は「自分が弱いから」「罪悪感が強すぎるから」と思っている。でも、少し立ち止まって考えてほしい。その罪悪感、本当に自分の問題だろうか。
人手不足の職場で「辞めます」と言うのがつらいのは、あなたの性格のせいじゃない。そう感じさせる構造の中に置かれているからだ。日本看護協会の調査では看護師の離職率は毎年10%を超え続け、有効求人倍率は2.2倍。慢性的に人が足りていない状態が当たり前になっている職場で「辞めたい」と言えば、罪悪感が生まれるのは当然の反応だ。でもそれは、あなたが弱いのではなく、職場が正常な状態を保てていないことの問題だ。
「辞めます」って言えない間、ずっと「私が我慢すれば回る」って思ってた。でも今思えば、私が我慢し続けることで、その職場の異常な状態が「正常」として維持されてただけだった。
看護師が「辞めたい」を言い出せない理由、全部並べてみる
「言い出せない」感情には、いくつかのパターンがある。自分がどれに当てはまるか、確認してみてほしい。
人手不足への罪悪感
いちばん多いのがこれだ。ただでさえギリギリの人員で回っているのに、自分が抜けたらさらに残った人への負担が増える。その想像が「辞めます」という言葉を飲み込ませる。
ただ、冷静に考えてみてほしい。人手不足を生んでいるのは、あなたが辞めようとしていることじゃない。そもそも適切な人員を確保できていない、職場の構造と病院の経営判断の問題だ。あなたが辞めなければ解決する問題ではないし、あなたが辞めたから悪化する問題でもない。
お世話になった人への恩義
指導してくれた先輩、かわいがってくれた師長、一緒に夜勤を乗り越えてきた同期。その人たちの顔を思い浮かべると、「裏切るみたいで言えない」という気持ちになる。これはとても誠実な感情だ。でも、その誠実さが、自分を縛る鎖になっていないか。
師長にはすごくよくしてもらった。だから「辞めます」って言ったとき、「裏切ったみたいで申し訳なかった」って泣きそうになった。でも師長は「そう決めたなら応援するよ」って言ってくれた。私が一人で抱え込んでた罪悪感、全部空振りだった。
引き止められることへの恐怖
「どうせ引き止められる」「何度も呼び出されて説得される」という予測が、最初の一言をブロックする。実際、「退職できる雰囲気じゃない」と感じて退職の希望を申し出ることができない看護師は少なくないし、「現場が忙しいから無理」「退職されると業務が回らなくなる」と拒否されるケースも存在する。
でも知っておいてほしいのは、法律上、退職は2週間前に申し出れば成立するということだ。民法627条1項に「雇用の期間を定めなかったときは、いつでも解約の申し入れができる。この場合の雇用は申し入れの日から2週間を経過することで終了する」とある。病院が「辞めさせない」と言い続けることは、法的には許されない。
患者さんへの申し訳なさ
長く担当してきた患者さん、退院まであと少しの患者さん。その顔が浮かぶと「自分が抜けていいのか」と思う。これは看護師としての真摯さの表れだ。でも、あなたが消耗しきった状態で続けるケアと、心身が整った状態で新しい職場で提供するケアと、どちらが本当に「患者さんのため」になるだろう。
「辞めたあと」への漠然とした不安
転職先が見つかるか、収入が途切れないか、次の職場でやっていけるか。不確かなものへの不安が、今いる場所に縛り付ける。でも、これは情報で解消できる不安だ。看護師の有効求人倍率は2.2倍前後。動こうと思えば動ける市場にいる。
「言えない」が続くと何が起きるか
辞めたいという気持ちを抱えたまま働き続けることには、はっきりしたコストがある。
引き止められ続けた結果、半年から1年もの間退職できずにいる看護師もいる。その間、心はどれだけ消耗するか。「言えない」でいることにも、確実にコストがかかっている。
辞めたいと思い始めてから実際に言い出すまで、8ヶ月かかった。その8ヶ月、毎朝「今日こそ言おう」と思って、毎晩「また言えなかった」で終わってた。あの時間、返してほしいと今でも思う。
罪悪感を持つこと自体は、おかしくない
ここまで「罪悪感は構造の問題」と書いてきたけど、一方でこうも思う。辞めることに罪悪感を持てる人は、それだけ職場や患者さんのことを真剣に考えてきた人だ。そのこと自体は、否定しなくていい。
ただ、その罪悪感を「だから辞めてはいけない」という結論につなげるのは、違う。罪悪感を感じながら、それでも自分の人生を選んでいい。そのふたつは、矛盾しない。
辞めるとき、罪悪感がなかったかといえば嘘になる。あった。でも辞めたことを後悔はしていない。罪悪感と後悔は、別物だと気づいた。
「言えない」から「言える」に変わるために
実際に動き出すための順番として、こういう進め方が現実的だ。
「辞めます」の一言は、許可をもらうものじゃない。自分の意思を伝えるものだ。その一言を言う権利は、最初からあなたにある。
看護roo!は登録無料。担当エージェントに「どう伝えればいいか」「今の職場の退職交渉が不安」という相談もできる。求人を見るだけでもいい。まず「次の場所があるかどうか」を知ることが、一歩目になる。
