人間関係が限界です。

無給・強制の業務蔓延、ピリピリ・嫌味・モラハラ…。

感情が限界です。

患者の前では笑顔、トイレの中では無表情。

やりがいが限界です。

感謝もお金もいいことしてる実感もない。

シフトが限界です。

感情も体力も、明けの朝には空っぽ。

看護における自己効力感(Self-Efficacy)とは 患者さんにも自分にも大切な理由

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研修や勉強会で「自己効力感」という言葉を聞いたことはあると思う。でも「バンデューラが提唱した概念で……」という説明を聞いた瞬間に「また理論の話か」と思って、頭に入らなかった経験がある人も多いんじゃないかな。

実はこれ、知っておくと患者さんへのアプローチが変わるし、自分自身のしんどさを言語化するのにも使える概念だ。今日は現場目線でできるだけ平たく書いてみる。

自己効力感(Self-Efficacy)とは何か

自己効力感は、カナダの心理学者アルバート・バンデューラ(Albert Bandura)が1977年に提唱した概念だ。一言で言えば、「自分はこれをやれる」という感覚の強さのこと。

正確には「ある行動をうまく遂行できるかどうかについての、自分自身の確信の程度」と定義される。難しく聞こえるけど、要するに「やればできる」「うまくいく気がする」という自信の感覚だ。

自己効力感は自己肯定感とよく混同されるけど、少し違う。

  • 自己肯定感「自分という存在に価値がある」という感覚(存在への確信)
  • 自己効力感「この行動を自分はうまくやれる」という感覚(行動への確信)

自己効力感が高い人は、難しい場面でも「なんとかなるかも」と思って行動できる。低い人は、「どうせ無理」「失敗したらどうしよう」が先に来て、行動が止まる。

参考:自己肯定感とは?簡単にわかりやすく説明します!
参考:自己効力感とは?セルフ・エフィカシーを高める4つの源泉

自己効力感はどこから来るのか、4つの情報源

バンデューラは、自己効力感が高まる情報源を4つ挙げている。これが現場で使えるポイントだ。

①達成経験(直接的成功体験)

4つのうち最も強力な情報源。自分の力でやり遂げたという経験が積み重なると、「自分ならできる」という感覚が根付く。逆に、失敗が続くと自己効力感はどんどん下がる。

患者さんで言えば、「昨日より少し長く歩けた」「初めて自分で着替えられた」という小さな成功体験の積み重ねが、セルフケアへの自信につながる。

②代理体験(モデリング)

自分と似た立場の人が成功している姿を見ることで「自分にもできるかも」という感覚が生まれる。遠い存在の成功より、「自分と近い人」の成功のほうが効果が高い。

患者さん同士の交流が回復に良い影響を与えることがあるのも、この代理体験の効果だ。同じ病気を経験した先輩患者さんの話を聞くことで「自分もできるんだ」と思えるようになる。

③言語的説得

「あなたならできる」「この調子でいけますよ」という言葉かけが自己効力感を高める。ただし、これだけで長続きはしない。①や②と組み合わせることで効果が出る。

逆に「またミスして」「なんでこんなことができないの」という繰り返しの否定的な言葉は、自己効力感を確実に下げる。これは患者さんへの言葉だけでなく、職場での先輩・上司からの言葉も同じだ。

④生理的・情動的喚起

体の状態や気分が自己効力感に影響する。心身が整っているとき、気持ちが前向きなときは「できそう」と感じやすい。逆に疲弊している、気分が落ち込んでいる状態では、自己効力感は下がりやすい。

睡眠不足、慢性的な疲労、精神的なストレスが続くと、自己効力感が自然と下がっていく。これは意志の問題じゃなく、生理的なメカニズムだ。

患者さんのケアで自己効力感を意識するとはどういうことか

看護理論のドロセア・オレムは、セルフケア不足の患者に対して自己効力感を高める看護が重要だと述べている。たとえばリハビリで動けるようになってきた患者さんが、「看護師にやってもらうのが当たり前」という状態になっているとき、そのまま全介助を続けることがその人の自己効力感を下げていることがある。

具体的には、こんなアプローチが自己効力感を高めることにつながる。

  • できていることを具体的に言語化して伝える(「昨日より10メートル多く歩けましたね」)
  • 小さな目標を一緒に設定して、達成を一緒に確認する
  • 同じ疾患を乗り越えた患者さんの話を(本人の許可を得て)伝える
  • 「あなたのペースでいい」という安心感を提供し続ける
  • 失敗したときに「次はこうしてみましょう」と再挑戦を支える

糖尿病の患者さんの自己管理支援、がん患者さんの治療継続、高齢者のリハビリ——いずれも「患者さん自身がやれると信じられるかどうか」が、ケアの質を左右する。

看護師自身の自己効力感の話もしたい

ここからは少し視点を変える。患者さんへの自己効力感アプローチを学んでいるうちに、「これ、今の自分に当てはまるな」と思った人はいないだろうか。

看護師の自己効力感が下がるのは、弱いからじゃない。バンデューラの言う「生理的・情動的喚起」の問題だ。心身の疲弊が続けば、自己効力感は下がる。それはメカニズムとして正しい反応だ。

たとえばこんな状態、心当たりはないか。

  • 以前は「うまくできた」と思えていた処置や対応が、最近は「失敗するんじゃないか」と不安になる
  • 患者さんへの言葉かけが、どんどん事務的になってきた気がする
  • 後輩に何かを教えるとき、自信を持って話せなくなってきた
  • 「自分には向いていないのかも」という感覚がじわじわ出てきた

これは個人の問題じゃなく、環境の問題である可能性が高い。バンデューラの理論に従えば、自己効力感を下げる環境——失敗を責められる、頑張りを認めてもらえない、慢性的な疲弊状態——が続いていれば、誰でもそうなる。

あるとき後輩から「先輩ってどうしてそんなに自信持ってケアできるんですか」って聞かれた。でも私、全然自信なかった。それどころか、毎日「また何かやらかすんじゃないか」ってびくびくしてた。そのことに気づいたとき、ちょっと怖くなった。

自己効力感が下がっているとき、できることがある

バンデューラの4つの情報源は、自分に対しても使える。

まず達成経験について言えば、今の職場で「できた」という感覚を得にくくなっているなら、それは職場の問題かもしれない。人手不足でケアの質が保てない、頑張っても評価されない、常にミスを指摘される環境は、達成経験を積みにくくする。

言語的説得についても同じだ。「またミスして」「なんで気づかないの」という言葉が日常になっている職場では、自己効力感は構造的に下がり続ける。これは個人の心がけでカバーできる範囲を超えている。

そして生理的・情動的状態については、慢性的な疲弊とサービス残業が続く職場では、どうしても土台が整わない。

環境を変えることが、自己効力感を取り戻すための一番直接的な方法である場合がある。

転職して最初の3ヶ月、「こんなに褒められていいのかな」って違和感があった。患者さんへの関わりをちゃんと見てくれて、「あの対応よかったよ」って言ってもらえる。前の職場では「それで当たり前」だったことが、ここでは達成として認められる。少しずつ、「自分はやれる」という感覚が戻ってきた。

今すぐ転職する必要はない。ただ、「自己効力感が下がっている原因が職場環境にある」と気づくことが、最初の一歩になる。自分の感覚がおかしいんじゃなく、環境がそうさせているかもしれない。そう思えるだけで、少し楽になることがある。

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