看護師の手取りはいくら?1年目から10年目までの実感と、手取り30万円の壁

看護師の給料は高いと言われます。でも給与明細を開いて、いちばん下の「差引支給額」を見たとき、そう感じたことがある看護師はどれくらいいるでしょうか。特にお年寄りから、病院で看護師先生で働いてるんだからいっぱいお金もらってるんでしょと言われたりします。「いやいやそんなことないんですよ…」と言っても、本当にたくさんもらってると信じている人もいっぱいいるみたいですよね。。。
病棟で10年以上働いてきましたが、友人に「看護師って給料いいんでしょ」と言われるたびに、毎月の振込額を思い浮かべて少し黙ってしまいます。額面と手取りの差は思っている以上に大きく、しかもその差は年数とともに広がっていきます。この記事では、看護師の手取りが実際にいくらなのかを、データと私自身や同僚の給与明細の話をもとに書いていきます。
看護師の手取りは月いくら?平均の額面から計算した目安
厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査によると、看護師の月の給与は平均で約36万3,500円、年間の賞与は約83万5,000円で、年収にすると約519万7,000円です。この月給には夜勤手当や残業代も含まれています。
額面36万円台の場合、手取りはおおよそ28万円前後になります。健康保険と厚生年金、雇用保険でおよそ15%、そこに所得税と住民税が引かれるので、額面の75〜80%くらいが手元に残るイメージです。ここでの数字は、独身で扶養家族がいない人の、おおよその目安として見てください。
平均より手取りが少なく感じる理由
平均の手取り28万円と聞いて、「そんなにもらっていない」と思った人も多いはずです。理由のひとつは、平均には夜勤を月に何回も入れている人や、管理職、ベテランの数字も含まれていることです。
もうひとつは、病院独自の天引きです。寮費、互助会費、労働組合費、制服のクリーニング代、院内保育の保育料。私が以前いた病院では、こうした天引きだけで月に2万円近くありました。同じ額面でも、病院によって手取りはかなり違ってきます。
看護師1年目の手取りと2年目に手取りが減る理由
日本看護協会の2024年病院看護実態調査では、大学卒の新卒看護師の初任給(税込)の平均が月28万4,063円でした。夜勤が始まる前の月なら、手取りはおおよそ23万円台になります。
1年目の6月ごろから夜勤に入り始めると、手当のぶんだけ手取りは少し増えます。「看護師ってやっぱり稼げるんだ」と思えるのはたぶんこの時期です。
2年目の6月に手取りが下がって驚く
ところが2年目の6月になると、多くの看護師が給与明細を見て首をかしげます。昇給したはずなのに、手取りが1万円以上減っているからです。
原因は住民税です。住民税は前の年の所得をもとに計算され、6月から天引きが始まります。1年目は前年に収入がないのでほぼかかりませんが、2年目からは1年目の所得に対する住民税が毎月引かれるようになります。年収400万円台なら、月に1万5,000円前後になることが多いです。
私も2年目の6月の明細を見て、何かの間違いではないかと事務に聞きに行きました。同期と休憩室で明細を見せ合い、「昇給が2,000円で住民税が1万5,000円って何なの」と笑うしかなかったのを覚えています。看護学校では、こういうことは教えてもらえません。
看護師の手取り30万円は何年目から?
よくある疑問が、「看護師で手取り30万円になるのは何年目か」です。手取り30万円にするには、額面でおおよそ39万円から40万円が必要になります。
日本看護協会の同じ調査では、勤続10年(31歳から32歳)で管理職ではない看護師の税込給与の平均は、月33万4,325円でした。手取りに直すと26万円前後です。つまり、10年続けても、普通に働いているだけでは手取り30万円には届かないことが多いということです。
手取り30万円を超えている看護師の働き方
私の周りで手取り30万円を超えていた人は、だいたい次のどれかに当てはまっていました。二交代の夜勤を月8回以上入れている人、主任や師長などの役職がついている人、給与水準の高い大学病院や公立病院で長く勤めている人です。
ある先輩は、夜勤を月9回入れて手取り31万円でした。ただ、その先輩は「休みの日はほぼ寝て終わる。手取り30万は、体力の前借りだと思ってる」と話していました。夜勤の回数を減らした月は、手取りが一気に25万円台まで下がるそうです。
年収の面から見た話は、看護師で年収1000万円や800万円は可能かを書いた記事でも詳しく触れています。
ボーナス月の手取りは別に考える
月の手取りとは別に、賞与の手取りも気になるところです。平均の賞与約83万5,000円から社会保険料と所得税が引かれると、手元に残るのはおおよそ67万円前後になります。夏と冬に分けると、1回あたり30万円台という人が多いのではないでしょうか。
ただ、病院の経営状態によって賞与は大きく変わります。コロナ禍のころ、私の知人が勤めていた病院では冬の賞与が前年の半分になり、「毎月の手取りでぎりぎり回していたから、ボーナスでカードの支払いをする予定が全部狂った」と話していました。賞与を当てにした生活設計は、思った以上に危ういものです。
夜勤手当で看護師の手取りはどれだけ変わるか
看護師の手取りを大きく左右するのが夜勤手当です。夜勤手当の額は病院によって差がありますが、二交代の夜勤1回で1万円前後から1万5,000円程度に設定している病院が多い印象です。
仮に1回1万2,000円だとすると、月4回で4万8,000円、月8回なら9万6,000円になります。税金と社会保険料が引かれるので、手取りに残るのはその7割から8割ほどです。夜勤を4回増やして、手取りが3万5,000円から4万円ほど増える計算になります。
夜勤をやめると手取りはどうなるか
逆に言えば、夜勤のない職場に移ると、手取りはそのぶん減ります。病棟で手取り27万円だった同僚が日勤だけのクリニックに転職したとき、最初の給与明細の手取りは21万円台でした。
ただ彼女は、「残業がほとんどなくなったから、時給で考えたらそんなに変わらない。何より夜に眠れるのが大きい」と言っていました。手取りの金額だけでなく、その金額を何時間働いて得ているのかも見ておく必要があります。夜勤手当の計算方法は夜勤手当と割増賃金の計算例にまとめています。
看護師の手取りを職場の種類で比べると
同じ看護師でも、どこで働くかで手取りの感覚はかなり違います。ここでは、私や同僚がそれぞれの職場で働いたときの実感をもとに、傾向を書いておきます。金額は施設ごとの差が大きいので、あくまで目安として読んでください。
大学病院や公立病院
基本給が比較的高く、年齢や経験年数に応じて着実に上がっていくのが特徴です。賞与も安定していることが多く、長く勤めるほど手取りは増えていきます。その代わり、委員会や研究、研修が多く、時間外の負担が大きいと感じる人もいます。
中小規模の民間病院
基本給は病院によってばらつきが大きく、夜勤手当で手取りを支えている形のところが多い印象です。夜勤の回数が減ると、手取りがすぐに下がります。同期は「基本給が低いから、夜勤をやめたら暮らせない」と、夜勤から抜けられない理由を話していました。
クリニックや介護施設
夜勤がない、または少ないため、病棟より手取りは下がるのが一般的です。ただ、残業が少なく、休みも取りやすいところが多いので、時間あたりで考えると差は小さくなります。介護施設ではオンコール手当がつくこともありますが、夜勤手当ほどの額にはならないことがほとんどです。
訪問看護や美容クリニック
訪問看護は、日勤中心でも基本給が高めに設定されていることがあり、オンコール手当や訪問件数に応じた手当で手取りが増える場合もあります。美容クリニックは、売上に応じたインセンティブで手取りが大きく増える人がいる一方で、目標に届かない月は基本給だけになることもあります。どちらも給料の仕組みを入職前によく確かめておく必要があります。
看護師の手取りが少ないと感じたら見直したいこと
手取りが少ないと感じたときは、まず給与明細の中身を確かめてみてください。支給の欄と控除の欄を見比べると、意外なことに気づく場合があります。
残業代がきちんとついているか
前残業や、勤務後の記録の時間に残業代がついていない病院は、今も少なくありません。月に10時間のサービス残業があれば、時給2,000円として2万円、1年で24万円分を受け取っていないことになります。
手取りが少ないと感じる理由が、実は「働いた時間に対して払われていないこと」だったという人もいます。この問題は無賃金の前残業は違法なのかを書いた記事で詳しく取り上げています。
同じ経験年数の相場と比べてみる
次に、自分の給料が同じ年代や経験年数の相場と比べてどうなのかを見てみます。看護師の給料は、病院の規模や地域、設置主体で大きく変わります。同じ10年目でも、病院が違えば月に3万円、4万円の差がつくことは珍しくありません。
年代ごとの相場は30代看護師の年収の平均と中央値や40代看護師の年収の平均と中央値で確認できます。相場より明らかに低いなら、それは努力が足りないのではなく、職場の給与体系の問題かもしれません。
看護師の手取りで貯金はできるのか
手取りの話になると、必ず出てくるのが「貯金できてる?」という話題です。一人暮らしで手取り24万円の後輩は、家賃7万円、食費4万円、スマホや光熱費で3万円、奨学金の返済が2万円。そこに通勤の交通費の立て替えや、勉強会の参加費、ナースシューズの買い替えが重なると、月に3万円残ればいいほうだと言っていました。
夜勤明けの疲れでコンビニやデリバリーに頼る日が増えると、食費はすぐに膨らみます。私も夜勤の多かった年は、手取りが多かったはずなのに、なぜか貯金があまり増えませんでした。手取りの額だけでなく、その働き方でどれだけお金が出ていくのかも、生活の中ではかなり大きいと感じます。
手取りを上げる方法は夜勤を増やすことだけではありません
手取りを増やそうとすると、真っ先に思いつくのが夜勤を増やすことです。でも夜勤を増やすと体への負担も増え、長くは続けにくくなります。私の同期にも、夜勤を詰め込んだ結果、2年ほどで体調を崩して日勤の部署に移った人がいました。
もうひとつの方法は、同じ働き方のまま、給与水準の高い職場に移ることです。基本給が高い病院、夜勤手当が高い病院、残業代がきちんと支払われる病院に移るだけで、手取りが月に2万円、3万円変わることもあります。後輩のひとりは、同じ急性期の病棟から別の病院に移っただけで、手取りが月に2万円ほど上がりました。仕事の内容はほとんど変わらなかったそうです。
給料のために体を削るのか、職場を変えて同じ働き方で手取りを上げるのか。どちらを選ぶかで、5年後、10年後の体と生活はずいぶん違ってくると思います。
看護師の手取りについてよくある疑問
手取り25万円は看護師として普通ですか
夜勤ありの病棟勤務で経験5年前後なら、手取り25万円前後はめずらしくない水準だと思います。ただ、夜勤を月に4回以上入れていて手取り25万円に届かないなら、基本給が低い可能性があります。同じ条件のほかの病院と比べてみる価値はあります。
パートの看護師の手取りはどれくらいですか
パートの看護師は時給制が多く、時給は1,600円から2,000円前後のところをよく見かけます。たとえば時給1,800円で1日6時間、月に16日働くと、額面は約17万円です。社会保険に加入するかどうかで手取りは変わりますが、加入した場合はおおよそ13万円から14万円ほどになります。
准看護師だと手取りはどれくらい違いますか
准看護師は正看護師より基本給が低く設定されていることが多く、同じ経験年数でも月に数万円の差がつくのが一般的です。私の病院でも、同じ病棟で同じ夜勤をしている准看護師の先輩が、給与明細を見ながら「仕事は一緒なのにね」とこぼしていたことがあります。正看護師の資格を取りに学校へ通う人が多いのも、この差が理由のひとつです。
看護師の手取りは「職場選び」で差がつく
看護師の手取りは、平均の額面から計算すると月28万円前後ですが、実際には1年目で23万円台、10年目でも26万円前後という人が多く、手取り30万円の壁は思ったより高いのが現実です。2年目の住民税や病院独自の天引きなど、明細を見ないと気づかない差もあります。
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