看護師に向いてない人の特徴は?「向いてない」と悩む人に知ってほしいこと

「私、看護師に向いてない」。この言葉を、夜勤明けの更衣室で何度聞いたかわかりません。後輩からも、同期からも、そして10年以上働いてきた今でも、みんな看護師に向いてないと思いながら働いている人がいっぱいいます。逆に向いている人なんているのかと思うぐらいです。
看護師に向いてない人の特徴を調べると、たくさんの項目が並んだ記事が出てきます。でも、その項目にいくつ当てはまったかで、看護師を続けるかどうかを決めるのは少し乱暴だと私は思っています。この記事では、看護師に向いてないと言われやすい特徴を正直に挙げたうえで、「向いてない」と悩んでいる人に知ってほしいことを書いていきます。
看護師に向いてない人と言われやすい特徴
まずは、現場で「向いてないかもね」と言われやすい特徴を挙げてみます。きつい言い方に聞こえるかもしれませんが、どれも実際に先輩や師長が口にしていたものです。今の時代と一昔前の時代だと、医療に対する考え方も仕事への向き合い方も価値観が違いますので、世代が違う人の意見をそのまま鵜呑みにする必要もないです。
確認を省いてしまう人
看護師の仕事は、確認の連続です。薬の名前、量、時間、患者さんの名前。何度も確かめるのは面倒ですが、ひとつ省いただけで患者さんの命に関わることがあります。「たぶん大丈夫」で動いてしまう人は、どの職場でも厳しく指導されます。
ただ、これは性格というより習慣の問題です。新人のころに確認を省いて怒られ続けた同期が、3年目には病棟でいちばんダブルチェックの丁寧な人になっていました。
優先順位をつけるのが苦手な人
病棟では、ナースコール、点滴の交換、検査出し、急な入院が同時にやってきます。全部を同じ重さで抱えてしまうと、何から手をつけていいかわからなくなり、パニックになってしまいます。
私自身、1年目はこれが本当にできませんでした。先輩に「今いちばん危ない患者さんは誰?」と聞かれて答えられず、トイレで泣いたこともあります。今思えば、優先順位は経験の中で少しずつ身についていくもので、最初からできる人はほとんどいません。
人の体に触れることや血や排泄物に強い抵抗がある人
看護師の仕事には、採血や点滴、排泄の介助、傷の処置など、人の体に直接触れる場面がたくさんあります。慣れの問題もありますが、どうしても生理的に受けつけないという人は、病棟の看護では毎日がつらくなってしまいます。
感情を引きずりやすい人
患者さんの急変や死、家族からの厳しい言葉、先輩からの叱責。看護師の仕事には、心が揺さぶられる出来事が毎日のようにあります。その感情を家まで持ち帰ってしまう人は、心がすり減りやすい傾向があります。
ただ、感情を引きずる人は、それだけ患者さんのことを真剣に考えている人でもあります。患者さんから「あの看護師さんに来てほしい」と名前を挙げられるのは、こういうタイプの人だったりします。
体力に自信がない人
病棟の看護師は、1日に何キロも歩き、患者さんの体位を変え、ベッドから車いすに移す介助をします。二交代の夜勤なら16時間近く勤務が続きます。体力に自信がない人は、夜勤のある病棟で働き続けるのがつらく感じられるかもしれません。
ただ、体力がないことは、看護師に向いていない理由にはなりません。夜勤のない外来やクリニック、健診センターなど、体力の負担が少ない職場はたくさんあります。体力が理由で病棟がつらいなら、それは職場選びの問題だと考えてみてください。
人に頼るのが苦手な人
看護師の仕事は、チームで回すものです。わからないことを聞く、手が回らないときに助けを求める、自分の担当を引き継ぐ。人に頼ることが苦手で、何でも一人で抱え込んでしまう人は、業務が回らなくなって追い詰められやすくなります。
頼るのが苦手な人ほど、責任感が強く、まじめな人が多いのも事実です。後輩に「迷惑をかけたくなくて聞けなかった」と言われたことがありますが、看護の現場では、聞かずに進めるほうがずっと大きな迷惑になります。これも慣れで変わっていく部分です。
「看護師に向いてない」と感じやすい時期
向いてないと感じる気持ちには、出やすい時期があります。日本看護協会の2024年病院看護実態調査によると、2023年度の新卒看護師の離職率は8.8%でした。新人のおよそ11人に1人が、1年以内に職場を離れている計算です。
1年目の夏から秋
夜勤が始まり、受け持ちの患者さんが増え、先輩のフォローが少しずつ外れていく時期です。「できないこと」が一気に目に見えるようになり、向いてないと感じる人がいちばん多いのもこのころだと思います。私の同期が最初に「辞めたい」と言い出したのも、1年目の9月でした。
3年目前後と異動の直後
3年目になると、新人の指導やリーダー業務を任されるようになります。自分のことだけで精一杯なのに、人の面倒まで見なければならず、「自分には向いてない」と感じる人が増えます。
異動の直後も同じです。前の部署では一人前だったのに、新しい部署では何もわからない。経験年数があるぶん、周りに聞きにくいのもつらいところです。こうした時期に感じる「向いてない」は、能力の問題というより、環境が変わったことによる一時的なものであることも多いです。
向いてないのは看護師?それとも今の職場?
「看護師に向いてない」と悩んでいる人に、いちばん伝えたいのがこのことです。向いてないのは、看護師という仕事全体なのか、それとも今の科や職場なのか。この二つは分けて考えたほうがいいと思います。
救急では毎日怒られていた同僚が透析室で生き生きし始めた話
救急外来に配属された同僚がいました。彼女はとても丁寧で、ひとつひとつの処置を確実にこなすタイプでしたが、救急ではそのペースが「遅い」と見られてしまいます。毎日のように先輩に急かされ、ミスを指摘され、1年目の終わりには「私は看護師に向いてない」と言っていました。
その彼女が2年目に透析室に異動すると、驚くほど評価が変わりました。同じ患者さんと長く付き合い、小さな変化に気づく丁寧さが、透析室ではいちばん必要とされる力だったのです。今では後輩から頼られる存在になっていて、「救急にいたころの私に、向いてないのは場所だよって言ってあげたい」と笑っています。
性格によって合う職場は変わる
人と話すのが苦手な人でも、手術室や検査室、透析室のように、決まった手順を正確にこなすことが求められる職場では力を発揮できることがあります。マイペースな人は、一人で利用者さんの家を回る訪問看護のほうが合っている場合もあります。反対に、変化の多い環境が好きな人には、救急や急性期の病棟のほうが楽しいかもしれません。
看護師の働く場所は、病棟だけではありません。クリニック、健診センター、介護施設、訪問看護、保育園、企業など、性格や得意なことに合わせて選べる場所はたくさんあります。
看護師に向いてない性格でも続けている人はたくさんいる
私の周りを見渡しても、いわゆる「看護師向き」の性格の人ばかりではありません。人見知りで患者さんとの雑談が苦手な先輩、心配性で何度も確認してしまう同期、気が強くて言い方がきつい後輩。それでもみんな、それぞれの場所で看護師を続けています。
人見知りの先輩は、雑談は苦手でも説明がとてもわかりやすく、検査の前の患者さんの不安を減らすのが上手でした。心配性の同期は、そのぶん誰よりもミスが少ない人でした。向いてないと思っている性格が、別の場面では強みになることもあります。
看護師という資格は、一つの働き方に縛られるものではありません。看護師の資格を持ちながら、別の仕事に移る人もいます。その選択については看護師資格を持ちながら看護師以外の仕事を選ぶのはもったいないのかを書いた記事でも触れています。
看護師に向いてる人の特徴も見ておく
向いてない人の特徴だけを見ていると、どんどん自信がなくなっていきます。反対に、看護師に向いていると言われる人の特徴も挙げておきます。
よく言われるのは、観察力がある人、体力がある人、気持ちの切り替えが早い人、人の役に立ちたいという気持ちが強い人です。でも、これを全部持っている看護師はほとんどいません。私の知っている優秀な先輩も、体力はないけれど観察力がずば抜けていたり、切り替えは苦手だけれど患者さんへの説明がとても丁寧だったりと、どこかに偏りがありました。
向いている特徴をひとつでも持っているなら、それを生かせる職場を選べばいいのだと思います。全部そろっていないことを理由に、自分を「向いてない」と決めつける必要はありません。
向いてないと感じたときに辞める前に試してほしいこと
看護師を辞めるかどうかを決める前に、できることはいくつかあります。私が後輩から相談されたときに、いつも伝えていることを書いておきます。
何がつらいのかを書き出してみる
「向いてない」という気持ちは、いくつかのつらさが混ざってできていることが多いです。夜勤がつらいのか、人間関係がつらいのか、業務の速さについていけないのか、患者さんの死がつらいのか。紙に書き出してみると、「看護師が嫌」なのではなく、「今のこの部分が嫌」だと気づくことがあります。
異動や別の科の見学を考えてみる
大きな病院なら、異動願いを出せる場合があります。いきなり転職するのが不安なら、別の科や別の職場の見学に行ってみるのもひとつの方法です。透析室に移った同僚も、最初は「異動なんて逃げだと思われる」と言っていましたが、結果的にそれが看護師を続けるきっかけになりました。
少し休むことも選択肢に入れる
疲れ切った状態では、向いているかどうかを冷静に判断することはできません。有給休暇をまとめて取る、体調が悪いなら受診して休職を相談するなど、一度立ち止まる時間を作ることも大切です。休んで体力が戻ったら、意外と「もう少しやってみようかな」と思えることもあります。
「向いてない」と言われた言葉をどう受け止めるか
自分で感じる「向いてない」より、人から言われる「向いてないんじゃない?」のほうが、ずっと深く刺さります。私も2年目のとき、プリセプターだった先輩に「あなた、看護師向いてないかもね」と言われたことがあります。その日は帰りの電車で涙が止まりませんでした。
あとになって、その先輩自身も人手不足で余裕がなく、言い方を選べる状態ではなかったのだと知りました。もちろん、だからといって言っていい言葉ではありません。でも、その一言は私の適性を判断したものではなく、その先輩のその日の余裕のなさが言わせたものだったのだと、今は思っています。
人から「向いてない」と言われたときは、その言葉が何を根拠にしているのかを、一度冷静に考えてみてください。具体的なミスの指摘なら、改善すればいいだけです。根拠のない人格への評価なら、まともに受け取る必要はありません。
本当に今の職場を離れたほうがいいサイン
一方で、「向いてないかも」という気持ちが、心や体からのサインになっている場合もあります。次のような状態が続いているなら、我慢を続けるより、働き方を変えることを考えたほうがいいと思います。
- 出勤前になると、腹痛や吐き気、頭痛が毎回のように出る
- 休みの日も仕事のことが頭から離れず、眠れない日が続いている
- ミスをするのが怖くて、手が震えたり、確認が終わらなくなったりする
- 以前は好きだったことに興味が持てなくなった
こうした状態は、性格の問題ではなく、今の環境が合っていないことで心身に負担がかかっているサインかもしれません。仕事が怖くなったときの話は、看護師の仕事が怖くなったときに読んでほしい記事で詳しく書いています。心身の不調が続いているなら、まずは心療内科などに相談してください。
人間関係が原因で「向いてない」と感じている場合もあります。その場合は、仕事そのものではなく、職場の人間関係が合っていない可能性があります。人間関係がドロドロで限界を感じている看護師の話も読んでみてください。
看護師に向いてないと悩むのは真剣に働いている証拠
看護師に向いてない人の特徴は、たしかにあります。でも、その多くは経験とともに変わっていくものですし、職場が変われば強みになることもあります。何より、「向いてないかも」と悩むのはそれだけ患者さんのことや自分の仕事を真剣に考えているからだと思います。
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