看護師、休職中に転職を考えていいのかという話
休職中にこの記事を読んでいる人がいたら、まずこれだけ伝えたい。「休んでいる間に転職を考えることは、何も悪いことじゃない」。職場への罪悪感、迷惑をかけているという気持ち、「こんなときに転職のことなんて考えちゃいけない」という思い込み。そういうものを全部抱えながら夜中にスマホで検索している人に向けて書く。今日は休職中の転職活動について、法的なこと・現実的な進め方・注意点を正直に整理する。
休職中に転職を考えることへの罪悪感について
「休んでいる間に転職なんて不謹慎だ」という思い込みはどこから来るか
「休んでいる間はとにかく休め。転職なんて考えるな」という正論っぽい言葉を言われたことがある人は多いんじゃないかと思う。でも、よく考えてほしい。転職を「考える」こと、情報を調べることは、決して体を酷使する作業じゃない。ベッドに横になりながらスマホで求人を見ること、エージェントのサイトで年収の相場を調べること、転職体験談を読むこと。疲れた体に、それほど大きな負担をかけることじゃない。「休職中の転職活動はいけない」という話は、多くの場合「今すぐ動き回って転職先を決めろ」という話と混同されている。情報を集めておくことと、体を無理させることはイコールじゃない。
そもそも、現在の職場に不満があって体調を崩したとしたら、「もっと早く情報を集めておけばよかった」という後悔をする人は多い。休職という状況は、強制的に立ち止まる機会を与えられているとも言える。その時間を「自分の次の選択肢を知るための期間」として使うことは、回復のプロセスの一部として十分意味がある。
職場への申し訳なさと、自分を守る権利
休職中、職場に迷惑をかけているという罪悪感を強く感じる人は多い。その気持ちは本物だし、否定するつもりはない。でも、体や心を壊した原因が職場環境にあるなら、「申し訳ない」と思いながら同じ環境に戻ることが解決策にはならない。厚生労働省の令和4年度「過労死等の労災補償状況」によると、精神障害の労災認定件数のうち保健師・助産師・看護師は全職種で2位という状況にある。看護師は特に精神的に消耗する職種だというデータが公的に示されている。そんな状況の中で「転職を考えるなんて」と自分を責めることに意味はない。
感情労働とバーンアウトの仕組みについて別記事で詳しく書いているが、看護師が燃え尽きに至るまでのプロセスは、個人の弱さではなく職場の構造的な問題によることが多い。休職したことへの罪悪感を感じる前に、なぜそうなったかの原因を見ることが先だ。
「休職してしばらくしてから、前の病院に電話一本入れるのも怖くて布団の中に何時間もいた。そのころこっそり転職サイトに登録してみた。なんか、見ているだけで『こういう職場もあるんだ』という気持ちになれた。実際に動くのはもっと後になってからだったけど、あのとき登録しておいたのは正解だった。消化器外科で10年やって、あんなにボロボロになるまで気づけなかった。情報だけでも先に持っておくことで、少し気持ちが楽になった。」
休職中の転職活動は法的にも規則的にも問題ない
在職中の転職活動と変わらない
まず法律の話をする。労働基準法にも、就業規則の一般原則にも「休職中の求職活動を禁止する」という規定はない。在職中に転職活動をすること自体は原則として自由であり、休職中も同じ扱いになる。副業や就労に関して就業規則上の制限がある場合があるが、「情報収集」「求職活動」の段階では問題にならないのが一般的だ。転職エージェントへの登録や面接を受けることも、実際には多くの病院の就業規則で明示的に禁止されていない。
「でも転職したあとで職場にばれたら…」と心配する人もいるが、転職活動は基本的にプライベートな行動だ。エージェント側は守秘義務を持っており、応募先が現職の職場に連絡することもない。在職中に転職活動をしている看護師は世の中に大勢いて、その多くは特に問題なく転職を成立させている。
就業規則で注意が必要な場合とは
稀に「休職中の副業・就労禁止」を定めた就業規則を持つ病院もある。ただしこれは「実際に他の職場で働くこと」に関するものであり、求職活動(情報収集・エージェントへの登録・面接を受けること)を明示的に禁止しているケースはほとんどない。念のため確認したい場合は、就業規則の「休職」と「副業」に関する条文を読むだけでいい。「他の職場で働くことの禁止」と「転職活動の禁止」は別物だ。転職エージェントへの登録や情報収集の段階であれば、まず問題になることはない。
就業規則への不安が転職活動を妨げているケースがある。その不安を感じること自体は自然なことだが、実際には「登録・相談・情報収集」を制限する就業規則はほとんど存在しない。気になる人は規則を一度確認した上で、動けばいい。
休職の原因が「職場環境」の場合、戻ることが本当に解決策か
職場に戻って体調が改善するイメージが持てるか
休職している間に「職場に戻る」ということを想像したとき、どんな感覚が来るか。それが大きなヒントになる。「戻ったら少し変わっているかもしれない」「あの人が退職したから少しは楽になる」という具体的な改善イメージがある場合と、「戻ることを考えただけで体が固まる」「同じことがまた起きる気がする」という場合では、対応が変わってくる。後者の感覚が強い場合、復帰が「回復」でなく「消耗の再スタート」になるリスクがある。
日本医療労働組合連合会の2022年看護職員の労働実態調査では、パワーハラスメントを経験した看護職員の割合は34.5%にのぼっている。職場環境が原因で体調を崩した場合、その環境に戻ることは根本的な解決にならないことが多い。統計が示しているのは「あなたが特別に弱かったわけじゃない」という事実だ。
同じ職場に復帰して再発した先輩の話
「復職してから2ヶ月で、また同じように動けなくなった。病棟の雰囲気も師長も変わっていなかった。医師の叱責、申し送りのタイミングでの無視、急変時に一人で対応させられる恐怖。環境はそのままだった。主治医に『なぜ同じ職場に戻ったのか』と聞かれたとき、言葉に詰まった。あのとき休職中にちゃんと情報収集しておけば、別の選択ができたかもしれない。」(内科病棟・10年目)
これは珍しい話じゃない。休職して戻って、また休職して、を繰り返すパターンは看護師の間ではよく聞く話だ。「もう少し頑張れば変わるかもしれない」という期待が、環境を変える決断を遅らせることがある。
休職中の転職活動の現実的な進め方
回復期に入ったと感じたら情報収集から始める
休職の初期(急性期)はとにかく休むことが最優先だ。この段階で転職活動を無理に始めようとすると、判断力が低下している状態での選択になり、ミスマッチが起きやすい。情報収集を始めるタイミングの目安として、「スマホを見ること自体は苦にならなくなった」「食欲と睡眠がある程度安定してきた」「外に出ることに大きな抵抗がなくなってきた」あたりが参考になる。完全回復を待つ必要はない。「情報を眺める」程度のことができるようになれば十分だ。
情報収集の第一ステップは、転職サイトやエージェントのサービスを「眺めてみる」ことだけでいい。夜勤なしの求人がどの程度あるか、クリニックの年収相場はどのくらいか、訪問看護の働き方はどういうものか。知っておくだけで次の選択肢が具体的になる。看護師の仕事が怖くなったサインについて書いた記事も、自分の状態を言語化する助けになるので合わせて読んでほしい。
エージェントへの「登録だけ」という使い方
転職エージェントへの登録は、転職を「決断すること」とは別物だ。登録したからといって転職しなければいけないわけではない。登録することで、今の病院の代わりにどんな職場があるか、年収相場はいくらか、夜勤なしの求人はどの程度あるかという情報を無料で得られる。担当者に「今は療養中でまだ動ける状態ではない、情報収集だけしたい」と最初に伝えれば、それに合わせた対応をしてもらえることが多い。
「他の場所に行こうと思えば行ける」という感覚が、今の職場での消耗の仕方を変えることがある。「出口がない」と思い込んでいる状態と、「出口はある、今はまだ使わないだけ」という状態では、精神的な余裕がまったく違う。登録・情報収集という低ハードルのアクションが、その感覚を作ってくれる。
「休職中に転職エージェントに登録した。最初に担当者に『今は療養中で、すぐには動けない状態です』と伝えたら、『焦らなくていいですよ、どんな条件が合うか整理するところから始めましょう』と言ってもらえた。転職が目的じゃなくて、選択肢を知ることが目的だったから、それだけで十分だった。あのときの気持ちの軽さは今でも覚えている。」(慢性期病棟・7年目)
精神的に不安定な状態で転職活動をするときの注意点
療養中は判断が曇りやすいということ
休職中、特に抑うつ状態にあるときは「思考の柔軟性」が低下しやすい。「どこに行っても同じだ」「自分には転職できない」という思い込みが強くなることがある。この状態で転職先を急いで決めてしまうと、今の職場から「逃げた先」を適切に選べないリスクがある。焦りがある場合は意識して「決断を少し先に延ばす」「今日は情報を集めるだけで終わる」という進め方をとることをすすめる。
看護師を辞めたいけど言い出せない罪悪感の正体という記事で、その感情の仕組みを整理している。自分の気持ちに正直になることへの難しさは、多くの看護師が感じていることだ。情報収集の段階で焦る必要はない。「今日はここまで」と決めて進む方が、結果的に良い選択につながる。
主治医や産業保健師と連携しながら進める
「転職を考えている」ということを主治医に伝えることをためらう人がいる。しかし、転職活動の進め方や時期について主治医の意見を聞くことは、療養の一環として有効だ。「今の回復状況からみて、転職活動を始めてもいいか」という質問をしてみると、具体的なアドバイスをもらえることがある。「情報収集の段階であれば大丈夫」と言ってくれる主治医は多い。
産業保健師がいる職場であれば、復帰か転職かを相談できる中立的な立場の人として活用できる。職場側の立場もあるため、何でも話せるわけではないかもしれないが「どんな環境なら続けられるか」という話は聞いてもらいやすい。自分一人で抱え込まず、相談できる相手を作りながら情報収集を進めることが、無理のない転職活動につながる。
休職中の転職活動まとめ、今すぐ決めなくていい
情報を持っておくだけで、気持ちが変わる
休職中に転職を考えることは、「今すぐ転職する」という意味じゃない。「自分に次の場所がある」ということを知っておくために、情報を集めておくことだ。看護師の有効求人倍率は2.2倍超(厚生労働省)であり、職場を選ぶ側の立場に十分立てることを忘れないでほしい。どの職場にどんな条件で求人が出ているか、転職エージェントが無料で教えてくれる。それを知っておくだけで、今の職場での消耗の感じ方は変わる。
「出口がない」と感じているとき、出口があると知っているだけで、そこに向かう体力が生まれることがある。休職中、何も決めなくていい。ただ、情報だけ先に持っておくことが、自分を守る選択肢を増やすことになる。転職するかどうかは、それを知ってから判断しても遅くない。
転職を考えること自体が「自分を守る行動」
情報を持つことが回復につながる理由
休職中に「もし転職するとしたらどんな場所があるか」を知っておくことは、回復の助けになることがある。「今の職場しかない」という閉塞感は、精神的な消耗を加速させる。一方で「選択肢がある」と知っていることは、今この場所に留まることを「仕方なく」ではなく「今は選んでいる」という感覚に変えてくれる。その感覚の違いは小さいようで大きい。休職中に一度でも「次の場所」を眺めてみた人は、たとえ転職しなくても「選ぶ力を取り戻した」という感覚を得やすい。
焦りと罪悪感を整理してから動く
「早く決めなければ」という焦りと、「休んでいるのに転職を考えるなんて」という罪悪感が同時にある場合、どちらに引っ張られても動きにくい。まず自分の中でその感情を整理することが先だ。日本医療労働組合連合会の2022年調査では、パワーハラスメントを経験した看護職員は34.5%に達する。あなたが消耗した原因の多くが職場側の構造問題である可能性は高い。罪悪感より先に「なぜそうなったか」の原因を見ることが、次の行動への足がかりになる。
「休職中ずっと、転職のことを考えていることへの後ろめたさがあった。でも主治医に『回復してきたなら、次の環境について情報を集めること自体は悪くない』と言ってもらえた。その一言で転職サイトを開いてみることができた。実際に転職したのはその6ヶ月後だったけど、あのとき情報を集め始めたのが回復への転換点だったと思う。」(外科病棟・5年目・休職後転職)
今すぐ転職しなくていい。ただ、「次の場所がある」と知っておくだけで、今の職場での消耗の仕方が変わってくる。看護roo!は登録無料。20万件以上の求人から「夜勤なし」「日勤のみ」「クリニック」で絞り込める。退職の伝え方や引き止めへの対処法も担当者に相談できる。
